『Anabiosis Passage』は、インドネシアにおける音楽文化(伝統音楽・大衆音楽・現代音楽)をメディア・テクノロジーにより先駆的な音楽プロダクションとして創造するコンサートである。本作は、音楽監督の森永泰弘が参加する現代舞踊作品『To Belong』(振付家の北村明子による作品)から誕生したものであり、森永が携わったインドネシアでのフィールド・ワークを通じてレコーディングした音や現地で出会った音楽家をフィーチャーしたユニークな共同音楽制作の作品である。
インドネシアのガムランやクロンチョン、ヒップホップに加えて現地の環境音を扱いながらインドネシア固有の文化を現代の側から解釈している。インドネシアの楽器・奏法・説話をモチーフに、メディア技術を扱い現代の儀礼空間を音楽コンサートという形式で創造した作品が『Anabiosis Passage』である。
本作は、クロンチョン歌手のエンダ・ララス、インドネシアのヒップホップ界を先導するジョグジャ・ヒップホップ・ファンデーションのリーダーであるマルツキ・モハメド aka Kill the DJ (Jogja Hiphop Foundation)、そして2014年1月に死去した国民的パフォーマー、人形遣いのスラマット・グンドノの音声を扱いインドネシアの音楽文化を新たなステップへと迎え入れるコラボレーションが実現している。日本からは森永が音楽監督とエレクトロニクスの役割を担い、弦楽四重奏とピアノを招聘し伝統と現代を交錯し日本とインドネシアの二国間を挟む新たな音楽文化の発信を実現した作品である。